| これは普通のUボート戦記とは一味違う。クレッチマーは確かにトップエースであり、敵船を何十隻も撃沈したが、戦争初期に捕虜になっている。普通ならそこで終わりだが、そうはさせないところがこの人の凄いところ。 捕虜収容所からの脱走計画(ドイツ版『大脱走』!)、「手錠事件」を巡る収容所衛兵との大乱闘、米国産業に関する諜報活動、暗号書簡を用いたドイツ本国との連絡、U570の拿捕を敵に許してしまった艦長や副長に対する秘密裁判など、これら全てが今までほとんど知られていなかったのではないか。 もちろん、クレッチマーをエースたらしめた戦闘場面の描写も多く、本書全体の約7割が海上場面である。あとの2割が収容所場面、残り1割がそれ以外の、例えばヒトラーとの会見など。戦闘場面に飽きた頃にガラっと舞台が変わるのは小説のような展開だが、これが全て史実であるのだから驚く。クレッチマーの人生のなんと波乱万丈なことか。どの場面も興味深く読めた。 ただ、丁寧に注釈を付けてくれるのはいいのだが、あまり長いと話の腰が折れる。章末尾にするなり、そのページの左側に寄せるなどの工夫が出来なかったものか。本書の面白さに比べれば些細なことかもしれないが・・・・。 |