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零戦撃墜王―空戦八年の記録 (光人社NF文庫)
 
¥ 840
発売日:1994-05
光人社
オススメ度:
通常2〜5週間以内に発送
 


 


■  撃墜王中の撃墜王
今まで数々の零戦の撃墜王と呼ばれた方の作品を読みましたが、この作品が一番読みやすい上に興奮をおぼえる作品でした。
これほどまでに激戦区での撃墜数を叩き出し、更に戦後まで生存されていた方はいらっしゃらないのでは。
日々 十数機程度の戦力で百機から数百機の来襲する敵と戦闘した上に200機以上の撃墜数を誇る凄腕。
決して個人プレーではなく、作品中でも常に列機に気を配る心構えがある中で、ある時は根っからの負けん気が出てきて無茶をしてしまうエピソードなど とにかく読んでいて常に興奮状態になります。
戦局の悪化や乗員・機材の補充の途絶えなどの戦時のバックボーンも詳しく記載してあり、なおかつ重要な戦局や戦場を常に身近で体験している筆者だけに、この作品を読むだけでも当時の状況を理解出来るかと思います。

率直な性格の筆者だけに好き嫌いがはっきりしていて、ある搭乗者の作品では崇拝されていた人物がこの作品では敬遠されていたりする所が面白いです。

はじめて作品を読み終えたすぐ後に 再び読み返したほど最高の作品でした。

■  岩本ファン必読
岩本氏の戦闘記録を読んで、興味深いのは次の2点である。

第一に、戦術眼で勝敗が決まるということ。敵がどの位置からあらわれるか、どんな機種があらわれるか、どこまで深追いしてよいか、ということを、岩本氏は、おそらく天才と経験で知っていたのである。
この本には書いてないが、岩本氏の視力は1・0くらいだったといわれる。しかし、敵機の発見は早かったというのは、読んでいたからなのだ。同様のことは、坂井三郎氏も指摘している。

第二に、集団行動では指揮官の能力で全員の運命がきまること。経験の浅い指揮官に率いられた部隊は全滅に近くやられ、逆にすぐれた戦術眼をもった指揮官が率いると、味方の損害は少なく、戦果が上がる。
このあたりは現代の組織にも通じるものがあるだろう。
とくに戦争では、人の生死という形で、はっきりそれがあらわれるので、おそろしい。

文体の変化が興味深い。中国戦線では、高度をさげて牧場の牛をおどかしたりして遊んでいたし、珊瑚海海戦でも、張り詰めた中にも武人として充実していたことが伺われる。
ガラっとかわるのが、珊瑚海海戦の帰投からである。珊瑚海海戦で、岩本氏は、初めて一作戦で味方が多く失われるのを経験し落胆する。そして内地にもどってミッドウェイの敗戦を知る。
そこからは、読んでいても、いらいらしているのがよく伝わってくる。
開戦初頭のような充実感は影をひそめ、せまりくる敵にとにもかくにも立ち向かっている、という印象である。
要するに、珊瑚海、ミッドウェイあたりを境に、岩本氏の意識から、戦争への勝利、という目標が消えていくのである。
ラバウル防空戦も本書のハイライトのひとつだが、それとても、勝利への一歩というつもりで戦っていたのではない。壁がくずれないように支えている、という印象を持つ。
仕事をする人間として、こういう状況はつらいものがあっただろう。

特攻についても、短いが印象的な記述がある。特攻が知れ渡ると全軍の士気は目に見えて落ちた、というものである。
岩本氏のような歴戦のパイロットになると、精神論はともかく、戦術としての特攻攻撃の無意味さを、当時の前線の状況から、しみじみと悟っていたのであろう。


■  日本海軍航空隊の至宝
撃墜機数202機!伝説のトップエース、日本海軍航空隊の至宝が書き遺した撃墜記録。日本最高の撃墜記録を持つ、岩本徹三 元海軍中尉(34期操練)の豊富な実戦経験、撃墜の真髄を書き記した回想録。
本作品は岩本氏が公表するつもりで書かれた回想録であったが、
昭和30年に病死されて以来、ご婦人のもとに保管され、日の目を見る事のなかった彼の遺稿である。まさに海軍いや日本の至宝であった岩本氏の遺稿を読まずして、空戦は語れないでしょう。
どちらかというと欧米型である一撃離脱戦法を極意とする。
巴戦(旋回し合って背後を取りあう戦い)は最終手段とするのが、撃墜王に共通する戦い方といえよう。しかも彼は、操練出身の兵隊あがりにも関わらず、中隊長を務めていたのである。搭乗員が不足していたとはいえ、彼に対する軍のよせる期待の大きさが伺える。まさに特別待遇と言える。
また、三号爆弾(空対空爆裂弾)の第一人者である岩本氏の投弾方法なども書かれており、非常に興味深い。彼の文章は自信に満ち溢れ、空戦を極めた男のかもしだす一匹狼的な雰囲気が感じられる。
また愛機に描く「桜」の撃墜マーク(大型機は八重桜)に誇りを持っておられたようで、文中にもしばしば登場する。しかも桜が60個以上ついた歴戦の愛機は、内地に送られて国民を鼓舞する為に展示されたのだそうだ。後輩たちも、その無数にある撃墜マークに憧れ、畏怖したであろうことは想像に難くない。敵機も253-102号機には一目置いていたに違いない。常に最前線にあって、終戦まで活躍した数少ない英雄の遺稿を是非読んで欲しい。

 
 
 
 
  
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