| 主人公のちびねこは、捨てられていたところを悩める高校生の時夫に拾われる。ちびねこは自分はいつか人間になると信じており、人間の時夫を愛する。だが時夫は同じ人間の女の子に恋心を抱き、さらにちびねこは美猫のラフィエルに猫は人間にはなれないことを聞かされる……。 『綿の国星』がよく「猫の姿を借りて少女の内面を見事に描いた」と評されるのは、少女の初めての「理想と現実の衝突」をうまく模しているからである。人間になれないということを知ったときのちびねこの悩みは、おそらくどんな人も中学生頃に味わったことのあるものではないだろうか。その悩みは初めてであるがゆえに、真剣であり、妥協がない。それに比べたら自分の行く末に対して漠然とした不安を抱く時夫の悩みは「下劣な悩みだ」とラフィエルに評されてしまうのである。(もちろん時夫の悩みも大変だろうけど) 一切が可愛らしいふわふわした絵によって進んでいく。だが大島弓子の絵は感情の密度が濃い。余白にも、ベタ塗りにも、何かの感情が表されているようである。とくにラストで精神的に成長したちびねこの独白部分は圧巻である。この表現こそが大島弓子の醍醐味だと思う。 『綿の国星』はシリーズ化したが、第1話がいちばんのおすすめ。 |