大友克洋は、空気の描き方が優れている。 絵の上手さ、パースペクティブの正確さはもとより、 登場人物どうしの距離感、感情の起伏の振幅など、 その感覚…というか間隔が、きわめて印象的な空気感を演出しているのだ。大友作品の結末で最も多く描かれているのが、「別れ」である。 感情的に、物理的に、人物と人物の距離が無限に開いていく。 その距離と速度、互いの関係の断絶は、読者の感情を強く揺さぶる。 たとえば「スカッとスッキリ」のラストシーンの、 主人公と扇風機のスイッチの距離のどうしようもなさは、 さながらミケランジェロの「アダムの創造」のようでさえある。 大友克洋が選んだ「距離」を味わいながら読んでみたい一冊だ。 |