| 本書は, 「宇宙と神の存在」や「科学と宗教」, 「ゆらぎ」と「フラクタル」の基本的性質, 「音楽」を「フラクタル性」をキーワードに解説しています。「フラクタル」とは「自己相似性」という意味で,海岸線や植物の一部を拡大していくと,その微細構造が上級構造と同一であること等が有名です。 著者の天外氏はソニーでCDやAIBOの開発に携わった技術者であり,佐治氏は理論物理学者です。科学で説明できないことを切り捨てることが常識であるならば,本書は題名も内容も常識の埒外です。しかし,それは素粒子や宇宙の果てといった観察精度の限界を超えるものは存在しえず,科学では説明できないということであり,また,科学はなお発展途上であり世界のあらゆる現象を説明する力はいまだ有していないということに過ぎません。つまり,本書の内容は科学とは別の次元や手法で理解すべきものです。 佐治氏が語る理論物理学の最先端はニュートンが完成させた近代科学とは別次元で,そこで得られた理解は却って宗教の教義との共通性を帯びてきます。この点は遺伝子解析の泰斗・村上和雄氏のナイトサイエンスに一脈通じるものがあります。村上氏は科学者の鎧を完全に脱ぎ捨てている訳ではありませんが,本書はさらに突っ込んだ話を展開しており,興味深く読みました。 本書で最も印象に残った話は「自然界にあるf分の1型のゆらぎの特徴は,「フラクタル性」,それも「時間的なフラクタル性」にある(P. 101)」です。その後,「今を永遠のように考えて生きなさい」という昔からの言葉が引用されていましたが,「今をどのように生きているかがその人の一生を決定付ける」ことの証左ではないかという直感が閃きました。本書は読者によって受け入れられるか否かが明確に分かれる類の本ですが,何らかの強烈な閃きを得る場合もあり,ということを申し添えたいと思います。 |