アメリカにおける、ネオ・リベラリズム政治学の泰斗、ジョセフ・ナイ教授の最新刊(といっても出版から一年経過しているが)。 すでに、ナイ教授は彼独自の概念である「ソフト・パワー」について再三提示してはきたが、誤解を受けるために今回はそれを単独のテーマとして書き下ろしとした、ということである。 内容は一見ネオコン批判、ブッシュ政権批判に見える。ナイ教授がクリントン政権で国務次官補にあったという予備知識を持つ方にとってはなおさらであろう。しかし、注意して読めばその内実は単に「アメリカの力の源泉のひとつであるソフト・パワーを意識してそれを活用することで、国際社会におけるアメリカの優位をさらに持続する」ことを訴えているに過ぎない、ということに気づくはずである。その意味で、決して広義のリベラルの主張ではないことには注意が必要だ。他のカスタマーの方も指摘しておられる通り、ソフト・パワーを端的に言い換えると「洗脳」である。「権力による最高の統治は、抑圧していることを自覚させず、自ら権力に従うようにさせることである」という政治的箴言があるが、それを実現させるための方法のひとつがソフト・パワーであると言えよう。 すでにソフト・パワーということばをご存知の方にとっては新味ある内容ではない。というのは、ナイ教授は学生・研究者向けと一般向けの著書で、ずいぶん内容を変えているようだからなのだ。国際政治・外交に関心のある向きには、この本よりもむしろ、学生向きの教科書としてすでに版を重ねている同教授の「国際紛争」をお勧めする。最新版にはソフト・パワーの話題も登場する。教科書とは言え、一般の社会人の方が読んでも、十分楽しめる内容となっている。 |