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 海底二万里 (創元SF文庫)
海底二万里 (創元SF文庫)
 
¥ 945
発売日:2000
東京創元社
オススメ度:
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■  海洋サーガの傑作
この物語は、1867年という設定である。つまり明治元年。おもしろい偶然の一致だ。

同じく潜水艦の物語に、ブーフハイムの「Uボート」がある。第2次大戦中のドイツ海軍の潜水艦Uボートに実際に乗り組んだ士官が、その体験を交えて描いたフィクションだ。それを読むと、潜水艦生活は、「海底2万里」ほど楽ではなく、上品ではなく、優雅でもないことがわかる。最新の原潜でも、ノーチラス号の優雅さはない。

海洋サーガの先駆として有名な「白鯨」は、モービー・ディックはともかくとして、捕鯨船上の生活はメルヴィルの実体験らしい。「海底2万里」の時代に近い航海の潮臭い実相を伝えてくれる。

海の物語で感じるのは、その時間の長さである。Uボートは出撃すれば2ヶ月ぐらい、捕鯨船は3年ぐらい寄港しない。単調な生活をじっとこらえて、チャンスを待つ。読むほうにとっても、文庫でも上下2巻は、しんどいことである。

その点、「海底2万里」のノーチラス号は、非常に高速で、どんなに深いところにも(まさにオウム貝のように)到達でき、見たいもの、得たいものをすぐに手に入れる。このスピードのある展開が爽快で、何度読んでもワクワクさせられる。

そういう構成との兼ね合いで、物語の各部分は独立している。だから、内容を知ってしまっている人でも、好きなところを読み返して、楽しめる。

メインテーマが海洋の光景、次が潜水艦の驚異。とかく人間同士の関係だけに埋没しがちな日常にあって、「海底2万里」での自然への開かれた眼差しは、とても新鮮だ。

人間は物語の必要に従って登場しているに過ぎない。とはいえ、ネッド・ランドとコンセイユのコミカルなやりとりには吹き出してしまう。

こういうご時世になってくると、ネモ船長は一種のテロリストではないか、とも思えてくる。しかし、19世紀の当時にたちかえってみれば、マルクスの資本論が世に出たのが、まさに本書と同じ1867年であり、ヨーロッパ世界は社会の根底から激動期を迎えていたわけである。社会全体にわだかまる不安などが、ネモ船長の人物造形に反映したともいえないだろうか。


■  19世紀の最先端技術がここに!
 読んでストーリーが面白く、読み直してまた新しい感動があり、
よくよく調べると驚いてしまうような物語が好きなんですが、
この海底二万里もそんな私のお気に入りの一つです。

 ノーチラス号の動力源としてガルバーニ電池というのが出てくるの
ですが、これはジュールベルヌの勝手な命名だと思っていました。
ガルバーニは、高校の生物の教科書にも出てくる程有名な動物の
神経伝達の研究者ですが、電池の発明とは関係ないと思っていました。
ところがよくよく調べてみると、ガルバーニは動物の神経伝達には
電気が関係していると予想し、電解質溶液と起電力の関係を深く
研究したため、その研究成果が、後のボルタ電池の発明につながり、
今ボルタ電池と呼ばれているものが、19世紀にはガルバーニ
電池と呼ばれていたことが分かりました。

 意外なところから科学史を学ぶことができて、ちょっと感動
してしまったのですが、今では小学生でも読むこの海底二万里
も、出版当時はかなりの知識人達が読むことを想定して書かれた
ようなので、内容的にも当時の最先端技術や世界情勢が盛り込ま
れており、調べれば調べるほどもっと面白いことが見つかりそうです。


 
 
 
 
  
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