ディクスン・カーは、実に不思議な魅力を持ったミステリ作家です。 「よくまあ、こんなトリック思いついて、しかもそれを作品に書いてしまったもんだ」という茶目っ気というか、おもしろ真面目のような心意気。 「読者の皆さん、どうです、びっくりしたでしょう?」という、読み手を何とかしてだまくらかし、引っかけてやろうというミステリ・スピリット。さり気なく作品の中に置いた伏線の妙。 H・M(ヘンリー・メリヴェール)がしばしばやってのけるドタバタ、ファース的なユーモア。ドワッハッハのこりゃたまげたね、まいったねシーン。 そして、読み手を話の中に引き入れるリーダビリティー。わくわく、ぞくぞくさせられるストーリーテリングの冴え。読ませ巧者の名人芸。 ほんとにまあ、実に魅力的で心打たれるミステリマインドを持った作家だったなあと、にこにこしてしまいます。 そんなカーの、「こりゃ上手いやねぇ」と堪能させられるミステリがこれ、『緑のカプセルの謎』。フェル博士ものの作品。トリックといい、伏線といい、リーダビリティーといい、バランスのとれた仕上がりになっていて、読みごたえは十分。 「ミステリは大好き。でも、カーの作品はどうもアクが強くてアホくさくて、いまいち馴染めない」という方にお薦めしたい作品です。 本書を読んで「へえっ。カーのミステリ、なかなかいけるじゃない」と思ったら、ぜひ、名作『火刑法廷』や『囁く影』なんかも読んでみてください。 |