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 月長石 (創元推理文庫 109-1)
月長石 (創元推理文庫 109-1)
 
¥ 1,260
発売日:2000
東京創元社
オススメ度:
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■  読みごたえがあります
黄色のダイヤである月長石の盗難事件を核にして紡ぎ出される物語です。
様々な人物による手記や日記によって構成されていますが、最初の老執事ベタレッジによる手記が面白く、一気に引き込まれてしまいました。
推理小説として読むと物足りない面があるかもしれませんが、人物描写による魅力がそれを補っています。

■  800年間の放浪の軌跡
この物語は、高名な寺院から動かされなければならなかった月長石が、再び見出され、インドのしかるべき寺院に収められるまでにわたる、800年の放浪の歴史だ。
レイチェルの誕生日に消えた月長石の謎を中心に話は進行するが、記録としての形態をとっているため、証言者による日記や回想を元に構成されている。
最初は、レイチェルの住んでいるヨークシャーの邸宅の召使頭、ベタレッジの回想。
70〜80歳の間の老人だが、実直な好人物で、愛読書「ロビンソークルーソー」から啓示を受けるという個性的な性格の持ち主。
この章では、ダイヤモンドが消えた前後と凄腕のカッフ部長刑事による、捜査の模様が描かれている。ベタレッジがカッフ刑事と出会い、探偵熱という病気を発見するというエピソードが心和ませる。
その後、舞台がロンドンへ移ると共に、語り手が次々は代わる。
私が一番印象に残ったのは、ジェニングス医師助手の章だ。
イギリス人の父と東洋系の異国の母を持ち、苦難の人生を送るジェニングスだが、ダイヤモンドの謎に関わって、暖かい気持ちを持ってこの世を去ってゆく。
紆余曲折を経て、ダイヤモンドが三人のバラモンによって、再びインドの地を踏み、信仰の対象となる場面は感無量だ。
長い物語だが、どうでもいいような記述が、後で生きてくるので、心して読むように。

■  ゆったり気長につきあいましょう。
物語の構造としては、事件が終息して後日に各関係者が、当事者視点でそれぞれの体験を証言するという体裁をとっています。それは、月長石盗難の舞台となったヴェリンダー家に仕える老齢の執事であったり、親戚の狂信的なキリスト教信者の女性であったり、顧問弁護士であったり、事件の捜査をした警部であったりします。

各々とある人の要請にしたがって回想録を書いているのですが、それぞれ特徴があっておもしろいです。共通して昔日のイギリス貴族的緩慢さと大仰な慎ましさが漂っていて、ほんとゆっくり読書するのに最適ですね。ディケンズに代表される当時の大衆文学の最良の部分を堪能できます。


 
 
 
 
  
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