| 日本における実質的な古美術商(但し、茶道具は又べつの話である)の歴史は明治に始まる。明治の元勲や財閥の当主たちは、その財力に物を言わせて、さまざまな古美術品の収集に血眼になり、売立てで二つとない名品が出たときには彼らの間ですさまじい競り合いが何度となく繰り返されたと聞く。 この本はちょうど日本のその時期に活躍したデュヴィーンという画商についての伝記である。但し彼が活躍したのはアジアではない。美術品については金に糸目をつけない米国の新興資本家へヨーロッパからの名画購入の仲介を行ったのである。彼が扱った名画のリストを見ると驚かされる。ラファエロ・レンブラント・ゴヤ等々の名が延々と続き、その絵のかなりの部分は、今、アメリカのナショナル・ギャラリーに寄付されて展示されている。 デュヴィーンと顧客との間のさまざまな名画についてのエピソードがこの本の中心部分だが、ナショナル・ギャラリーを飾る名品の裏にこのようなエピソードがあったということについて興味深く読ませてもらった。 但し、読んでいくにつれやるせない部分もあったのも事実である。確かにデュヴィーンの扱ったのは誰がみても名画といえるものだが、それを買ったアメリカの「成金」達はその絵の価値を本当にわかって買っていたのか疑問に思うような買い方をしているし、暗に著者もそれを揶揄するような記述をしている。デュヴィーンには同時代の日本の古美術商のように顧客を「目利き」に仕立てるというサービスが無かった用に思う。 |