| 天皇と書いてなぜテンコウではなくテンノーと読むのか。どっちだっていいじゃないかと叱られそうですが、実は深いわけがあるのです。 宮崎先生の論文「天皇なる称号の由来について」によると、天皇称号出現以前は天王という称号がありました。天王は仏教でよく使われる名前ですが、乱世の五胡時代、仏教の普及にともない、天王と称する支配者が中国各地に続出しました。そして中国の影響のもと、五王時代の日本の主権者が外国に対して天王と称したのは自然のなりゆきでした。 百済が倭王を天王と書いた記録があるそうです。百済が相手なら天王でもよいが、隋と対等な国交を結ぶとなると、「東天王敬白西皇帝」ではまずい。天王は皇帝よりも僅かながら格下だからです。でも中国には皇帝と同格の天皇という言葉がある。そこで、天王を天皇に書き改めました。しかし、字は変わっても呼びなれた呼称は簡単に変えられるものではない。テンノーはいぜんとしてテンノーであり続けました。 本書は、宮崎先生の日本古代に関する論考とエッセイを集めたものです。宮崎説にすべて賛成するわけではありませんが、天皇の称号に関する論文は、大勢の人にぜひ読んでいただきたい。と言うのも、日本古代には「大王」の時代があったとする謬説がはびこっているからです。単なる敬称に過ぎない大王を称号扱いしているのに誰も異を唱えない。一犬虚に吠ゆれば万犬実を伝う。まさに憂うべき状況ではありませんか。 |