| 「景観論」というと、志賀重昂『日本風景論』のように、名所絵的感性で文学的に捉えられた「美しい景色」をマクロ的に論じたり、あるいは「都市の雑多な景観(プラス評価にせよマイナス評価にせよ)」をミクロ的に論じたりするイメージがあります。 また、「空間論」「都市論」となると、構造主義を背景とした社会・経済学的考察や、もっぱら建築空間や都市計画の美的側面の話になってしまうきらいがあります。 本書の優れた点、「景観工学」の草分けとも言える性質は、これら既存の論点の間に立って、「われわれがどんな空間(あるいは景色・地形)を心地よく感じるのか」ということを、感性論的にかつ具体的に論じてゆく論点の立て方にあります。 初版以来20年を経ていますが、「景観」「空間」を論ずる上で、いまだに参照されるべき価値を持った書物だと言えます。参考文献も、文庫としてはまずまずの量が掲載されています。 |