| 人生のまだ「遠い朝」だった頃に出会った本たち。雪のひとひら、ひとひらが舞い落ちてきて、いつしか降り積もるように、須賀さんの心の引き出しにしまい込まれていった本たち。子供だった頃から無類の読書好きで、あれこれと本を読んでいった須賀さんが、スクリーンに投影するようにして、自分の心の糧となった本について語っていったエッセイ集です。 初めてその本に触れた時に、首をかしげてしまった言葉への疑問。それがある日、「ああ、あの言葉はこういうことだったのね」と、天啓のように脳裏にひらめくその瞬間。 初めてその本を読んだ時、記憶の中にとどめられた本の中の文章。それら文章たちが、オルゴールの蓋を開くと音楽が鳴り出すように、再び心によみがえるその瞬間。 そうした忘れ得ぬ瞬間を、本と自分とを結ぶ思い出の数々を紡いでいった須賀さんの文章の、なんて素敵なこと。わくわくしながら、引き込まれるように読んでいきました。 本をめぐるエッセイ集では、これまでは長田弘さんの『風のある生活』(講談社)がとっときの一冊でしたが、本書はそれに優るとも劣らない、とっときの二冊目になりました。 須賀さんの文章の見事なこと、そこに込められた思い出の生き生きと輝いていること。本を友とし、本の旅人と自他ともに認める方に、ぜひどうぞとお薦めしたい一冊です。 |