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 チェーホフ全集〈6〉 (ちくま文庫)
チェーホフ全集〈6〉 (ちくま文庫)
 
¥ 1,478
発売日:1994-01
筑摩書房
オススメ度:
 


 


■  ひとつの喩え話
喩え話をひとつ。

<神さまは、その信じる者たちが臨終を迎える時、最も輝かしい生命の一瞬をお与えになる。>

チェーホフは、彼の小説の主人公たちに、その一瞬を与える。
死とはそのように、訪れるべきものだと言いたげに。
そこには、悲しみも恐れもなく、ある種の浄化(カタルシス)さえ感じる。

「アンドレイ・エフィームイチはついに最期が訪れたのをさとり、イワン・ドミュートリチやミハエル・アベェリヤーヌイチ、そのほか何百万人という人たちが、不死を信じていることを思い出した。ひょとしたら、不死は存在するのだろうか? だが、彼は不死を望まなかったので、ほんの一瞬それについて考えただけだった。昨日読んだ並外れて美しい優雅な鹿の群れが、彼のわきを走りすぎた。それから!百姓女が書留郵便を握り締めた手を彼の方にさしのべた…… ミハエル・アベリヤヌイチが何か言った。それからすべてが消え、アンドレイ・エフィームイチは永遠に記憶をなくした。」  (「六号室」より)

<人の一生がいかなるものであれ、その魂は救われるべきものなのだ。>

キリスト教世界の人々の集団的・無意識的信念とでもゆうべきものが、ヨーロッパの辺境、ロシアの地に生きたチェーホフのなかにもいきずいていたということだろう。


 
 
 
 
  
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