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鬼 (Truth In Fantasy) 
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 鬼の研究 (ちくま文庫)
鬼の研究 (ちくま文庫)
 
¥ 714
発売日:1988-12
筑摩書房
オススメ度:
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■  鬼さん
想像にも容易いものかと思いますが、鬼とは寂しいものです。何よりも孤独です。
歴史の中に、鬼はその系譜を絶やすことなく、ひっそりと生き続けてきた。
ある時は世情の不安が、ある時は芸術の関連で、ある時は歴史的な事件が、鬼を生んできた。
すなわち鬼とは、現代にも存在しうるという、示唆の書です。
さて、全編通して鬼に対する愛情の満ちあふれたこの本。
客観的な検証がおろそかな気もしないでもありませんが、日本の風土を「鬼」という角度から斬る。
その着眼、内容共に面白い読み物であることは確かです。オススメ。

■  『それをかく鬼とはいふなりけり』
 歌人でもある著者が、鬼に感情移入して始まった研究なので、文章は情感たっぷりで、冷静な文体とはいえないと思った。
 それでも、なお、古代から近世まで、「鬼」を網羅し、一冊まるごと「鬼」で埋っている事例豊富な本として、入手する価値はあった。
 文体は、読んでいくとすぐに気にならなくなった。読了する頃には、この達者な文章がむしろ心地よくなっていた。
 文学や絵画に描かれた鬼を研究対象としているので、鬼そのものの研究というよりも、鬼を描いた人間・鬼を伝えた人間に、むしろ関心のウエイトがあると感じた。
 鬼物語が最も多く語られたのは、平安時代だという。大和朝廷に従わなかった「山の民」「棄民」と、その末裔の存在が、「山で集団生活する鬼たち」の伝説の背景に読み取られる。また一方で、政治的な思惑のうずまく王朝の中で、何が「鬼」と呼ばれたか。伊勢物語にある『それをかく鬼とはいふなりけり』とは、いったい何を見たのか。「天狗」にも一章が割かれている。
 中世に多くの名曲がつくられた能楽の「般若」面などをつける「女の鬼」への考察もたっぷりある。

 日本人は、さまざまなものを「鬼」というひとくくりの名で呼んできた。その内実がこの本で明らかにされる。著者のように、芸術的衝動と共に「鬼」に惹かれるのは、「鬼」の一面を見ているからにすぎない。ほかの残虐な「鬼」もあり、その、著者の理解からは離れるのかもしれない「鬼」のことも、この本はちゃんと含み、記述している。


■  行間から聞こえてくる鬼哭
鬼哭という言葉が行間から聞こえてくるような趣がありました。主に平安時代から中世にかけての鬼の成立、その生々流転の変化の相貌と衰亡の跡をたどって行きます。「鬼」に向けられた著者の眼差し、著者の思いが、ひしひしと伝わってきます。

鬼たちの声なき声が著者の心の底で受け止められ、考察され、嫋々たる管弦の響きを思わせる文章が素晴らしい。鬼に変身した後の「鉄輪(かなわ)の女」の気持ちに思いを馳せる件りなど、胸を発止と打つものがありました。

映像として殊に印象的だったのは、朝倉山の上から、大笠を着けた鬼が下界の葬列の光景をじっと凝視している姿でした。
<< 遺骸を運ぶ喪の列を、深々とした大笠の下からじっと見ていた鬼がいたというのは、まことに深い、静かなおそろしさを感じさせる。>>
と著者が書いている、その「深くて静かなおそろしさ」にぞくりとしました。

「鬼」たちの発生と変転、そして衰亡を見つめる著者の深い情がこめられた眼差し、きりりと引き締まった文章の凛とした味わい。

とても読みごたえがあり、心に残る一冊。


■  鬼とは何ぞや
鬼とは、かくも悲哀と滑稽、妖艶と優美さを表す、モノなのか─。歌人でもある馬場あき子が著した鬼の研究の名作。夢枕獏の「陰陽師」の『生成り姫ノ巻』の最後の言葉の意味は、ここにある、といっても過言ではない。何十年も前に書かれた本であるというのに、古さを感じさせないというのは凄い。鬼の哲学書であるから、ただ読むだけでも面白い。内容は、歴史的な鬼の研究ではなく、古典研究の鬼、謡曲の鬼、である。「鬼とならねばならなかった一人の女の内側を連綿と余すなく語って」いる謡曲鉄輪。「つねに深い羞恥の心が孤独な〈艶〉をたたえて流れて」いる謡曲葵上。ぜひ一度、御覧あれ。

 
 
 
 
  
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