著者は歌舞伎の女形の家に生まれ、歌舞伎役者の女房になったひと。 今の日本では稀有な「きものは日常」の暮らしをした人。 人前に出ることを繰り返す中で培われた江戸好みの和服選びを教えてくれる。溢れるほど着物を持っているだろうに、初心者に勧める1点目は「色無地」と手堅い。 長年着られて、着る機会が多くて、値段のわりに良いものを買えるから、という。 帯や着物の色、柄についても、良い例・悪い例ともに写真で出してくれているのがありがたい。 着物、帯、小物の値段の基準を明確に出しているのも特出。 例えば色無地なら15万円くらい、袋帯なら40万円くらい、全て揃えて70万円くらい。 金額の中には道明の帯締めや絹地の腰紐も含まれており、「最低価格」でなく「これならどこに出ても大丈夫」な着物の目安であることが嬉しい。 この本は10年に出版されたものなので、今なら全部揃えて80万円くらいか。 (本の中で道明の帯締17000円、今は20000円くらいなので。) 色無地+袋帯は、第一礼装としても使える組み合わせ、お稽古などさほど格を必要としない場で着るなら、小紋+塩瀬の白帯が良いとのこと。 私はこちらに惹かれる。 小紋は鮫小紋では無地と区別がつかないのでもう少し柄の主張したものを、地味に見え勝ちなので色の明るいものを、と丁寧なアドバイスが光る。 初心者には壁の高い色無地のオーダーの仕方、色無地ならオーダーしても2割ほどの割増ですむこと、遊び紋や比翼仕立ての仕立て代の目安などもあり。 本書の中で名前のあがった小物屋さん数軒を見に行ったら、「普通の値段」の品を多く扱っていた。 そういう店を選んで紹介してくれていることにも好感がもてる。 |