| 就職先はイギリスの老舗の古美術商スピンク。商社などとはちがってここには英国の階級社会がいまだに機能している。その誇りの高さは日本の骨董屋などとは雲泥の差がある(らしい)。 この職場で英国の上流階級相手に、彼女は英国式の老獪さを味わうことになる。最近の女性の書く英国ものがおもしろいのは、彼女たちが象牙の塔ではなく、実際の生活のなかから英国の実態を仕込んでくるためだ。 この本は後半になって時間の流れが一気に加速する。上司であった男のエイズによる死。経済の悪化で次々と独立していくディーラーたち。スピンクそれ自体もサザビーの傘下に入る。しかしそれでもなおイギリスは厳としてその孤高の姿で著者を迎える。これぞ伝統あるイギリスの誇りか。 「わが先祖たちがその叡知で世界からかき集めた財宝を、古美術商たちはうまく転がしているかえ?」というようなイギリス皇室のしたたかさはどうだろう。イギリス社会のおもしろさは階級があるためといっても過言ではない。もっともそれは外から眺めるかぎりのことだが・・・。 |