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 バナナと日本人―フィリピン農園と食卓のあいだ (岩波新書)
バナナと日本人―フィリピン農園と食卓のあいだ (岩波新書)
 
¥ 777
発売日:1982-01
岩波書店
オススメ度:
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■  バナナを通して南北問題を知る本
フィリピン産バナナの輸入は1970年代に入って劇的に急成長し、1975年には全輸入量の9割近くを占めるに至ったが、その舞台裏はどのようなものだったのだろうか。著者はフィリピンで日本向けバナナを生産しているのは、デルモンテ、ドール、チキータのアメリカ系多国籍企業と、バナンボ(住友商事)の合計4社にすぎず、典型的な多国籍企業による寡占状況が観察されること、またすべての企業が病虫害に強く生産性の高いキャベンディッシュという品種を用いて、ミンダナオ島の大規模プランテーションで栽培されていることをその特徴としてあげる。本書はバナナのような典型的な一次産品について、消費者である日本人にはなかなか見えてこない、生産国の内情を伝える良質のルポである。

著者はまた、今の日本ではあまり知られていない意外な点にも光を当てている。ミンダナオ島では、化学繊維の普及以前ロープの材料として用いられた「アバカ麻」(バナナと同じ芭蕉科に属し栽培条件もよく似ている)が栽培されてきたが、実はその栽培が主として日本からの移民によって進められてきたという事実だ。1920〜1930年代には日本から多くの資金と移民がミンダナオ島のダバオに入って移民人口が2万人に達し、フィリピン人からは満州国にちなんで「ダバオクォ(国)」と呼ばれたほどだったという。かつての日系移民のアバカ麻農場が、現代の多国籍企業のバナナ農場に変わったわけだが、たぶん著者が言いたいことは、どちらも現地住民による自給自足的土地利用と違って、世界市場への販売を目的とした生産だという点で、だからこそ現地に住む世界市場とのかかわりの薄い人たちとの間で様々な摩擦・問題が起こった(起こっている)ということなのだろう。

■  たかがバナナ、されどバナナ
ふだん食事をするときに、その食べ物に関わるつくり手や流通経路までは意識しない、というか、いちいち意識などしておれないのが本音であろう。それがバナナのような輸入作物ならなおさらだ。しかし著者はそれに対し、「ちょっと待て」と言い、「身勝手にすぎる」と訴える。

本書では、多くの日本人が、著者のその主張に耳を傾けて一考せざるをえない、バナナ栽培における労働者から多国籍企業まで、著者自身のフィールドワークに基づくありのままの事実と鋭い分析が列挙されている。フィリピン産のバナナに経済問題から植民地問題、南北問題、少数民族問題、戦後補償問題等まで関わっているのだ。読了後「されどバナナ」と痛烈に感じることに間違いはないであろう。

本書はあくまで、バナナという輸入食物を通じて、生産者と消費者の意識を身近に感じさせる本であり、食糧自給率の低い日本では、ほかに幾らでも本書におけるバナナの様に当てはめることができる食物があるが、何もその意識を輸入「食物」にだけ限定しなくてもよいことは当然であろう。
また、さきほど取り上げたような問題が様々横たわっているので、各領域の学問への招待として眼差しを向けるに、実に格好の書である。

■  経済や国家について、具体的事例を持って考えさせてくれる新書の名著
商売の基本は正直でフェアーであることだろう。経済のグローバル化の下では尚更、弱肉強食状態につけ込んで金儲けをする企業は世界秩序自体を破壊する。企業家も消費者もまた、国家とは何か統治とな何かを自国を例にもっと知るべきである。
この本は、新書であっても経済や国家について、端的に具体的事例を持って考えさせてくれる名著だと思う。

 
 
 
 
  
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