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| | | 増補 幕末百話 (岩波文庫) |
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江戸の息づかい |
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| 幕末のことを覚えている老人に当時の思い出を語ってもらった聞き書き集。内容も面白いが、語り口が、生き生きとしていていい。 例えば、 「昔の家督というものは無雑作で、今と違い、面倒なことはありません。御届けさえ済めば故障はないので。先達(せんだって)のお話の通りの大名はイザ知らず、その頃は相続は容易(たやす)いものでした。当今はこの間も孫を養子にするので、区役所へお百度を踏みましたよ。ホイ余計な愚痴を申した。ソコで家督のお礼というのは弁じようか。その御礼の前にこういう御書付が上(かみ)からまいるんだよ。」(177ページ) また、明治になってから世相が変わったことを嘆いた言葉にこんなのがある。 「ソレに「徳義」という二字ではなかったが、「義」という一字のためには随分と肩を入れて争ったもので、しかるに当今は「徳義」の二字はサテ置いて、「義」の一字のためにも力を尽す人はない。「利」の一字のために一生懸命で、真(しん)に我々老人株から見ると、行末が案じられます。」(183ページ) どんどんどんどん人間が「利」ばかりを追い求めて来て現在に至るわけだ。 明治になってからは一市井人として暮らしていた人に限って話を聞いており、生活が感じられるのがいい |
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無名の証言者たちによる歴史の側面 |
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| ここに収められた聞き書きは、ほぼ100人の無名の人々による幕末明治の回顧談です。これは明治35年ごろに行われたというから、まさに幕末維新の動乱期を見聞きし、かつ生き延びた市井の人々による歴史証言と言えるでしょう。百話シリーズがまず復活したのが昭和7年、後版を重ねてまた昭和43年に復刻され、今また文庫として出ているのは、このような幕末・明治の側面史が如何に求められているかが反映されていると思います。いわゆる正史として取り上げられない裏話、それがまたノンフィクションとして面白いというのが、百話シリーズの魅力です。かつて明治期に新聞に連載されていた折は、かの森鴎外が参考にしたという話もあり、現在に至るまで歴史小説・時代小説家たちのタネ本として、大いに用いられてきた聞き書きです。平成の世、21世紀に復活した実話集として、一読の価値があります。 |
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