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敗北を抱きしめて 下 増補版―第二次大戦後の日本人 
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 敗北を抱きしめて 上 増補版―第二次大戦後の日本人
敗北を抱きしめて 上 増補版―第二次大戦後の日本人
 
¥ 2,730
発売日:2004-02
岩波書店
オススメ度:
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■  日本人の民主主義の一つの出発点を示す
上からの民主主義とは何だったのかということを考えさせられる。戦後60年たち昭和の終わった今も、この時期に下された様々な決定の影響下で生きていることを思わせる。私たち、この時代を知らないものにとっては、やはりそれを外から研究したアメリカ人の論考はとても読みやすい。その読みやすさの意味も考える上で、当時を生きた人の文章も同時に読むべきかもしれない。

■  普通の人々の物語
米国における日本史研究の大家、ジョン・ダワーが著した本書『敗北を抱きしめて』は、敗戦からサンフランシスコ講和に至る占領下の日本の7年間を生き生きと描き出すものである。占領軍による改革は勝者による「押し付け」であったとし、その産物である戦後民主主義に対して否定的なスタンスを取る言説は今なお根強い。しかしながら著者は、「押し付け」の構造があったこと自体は肯定しつつも、しかし敗者の側を一方的に受動的な存在であったとみることを拒絶する。単に「勝者が敗者に何をしたか」ではなく、日本占領を「抱擁」として捉え、敗者が勝者にどのような影響を与えたのかに着目するのである。

そのような問題意識の下に、著者は、占領期日本の社会・文化に焦点を当て、「民衆意識」を掬い取ろうとする。「瓦礫となった世界において、社会の全ての階層の人々の声を回復し、全てをやり直すということ、それがどんなことを意味したかを感じ取ろうと努力した」(P9)というのである。

そんな本書は、まさに日本の「社会の全ての階層の人々」が、敗戦をどう迎え、あの戦争をどう認識し、占領軍とその改革にどう向き合い、平和と民主主義についてどう考えたかを描き出す「敗北の物語」である。上巻では、あの戦争のもたらした破壊と絶望、虚脱感を克服せんとするかのように登場してきた新しい文化、そしてGHQの改革とそれに対する民衆の呼応が描かれる。「戦後レジーム」からの脱却が叫ばれる今、そもそも日本の「戦後」とは何だったのかを考え直す上で本書は避けては通れない一冊であろう。戦後日本の「普通の人々」の生き様を描いたこのドラマティックな「物語」をじっくりと味わいたい。

■  日本人が触れたくない部分意識したくない部分?
たまたま手塚治虫の戦争直後の混乱期の漫画を読んでいたあとだったが、観察者視点と当事者視点ではどうも違うようだ。手塚治虫の漫画では、この本と同じように戦争からの開放感と同じに、この本では書かれていない反米感情、嫌米感情が薄い。恐らく一次資料を新聞や公式文書に頼っているからかもしれない。この本には当時の生活に関するインタビューが一切出てこない。新聞がインタビューしたものを使っているだけである。
方法論上、かなり問題はあるが、日本人が触れたくない部分について書いてある点で評価できる。

■  日本人にとって必読の名著
戦後の日本の歴史について知るうえで、非常に役に立つ貴重な証言を含む名著である。さすがにアメリカが誇る優秀な日本学者であり、俗っぽいマスコミ芸者の多いジャパノロジストとは一線を画す、優れた学問の成果であることがよく分かる。このような本をなぜ日本人がかけないかというところに、日本の学問の底の浅さを痛感してしまう。それを感じさせてもらえたこの本は、是非とも一億人に読むことを勧めたいと思った。

 
 
 
 
  
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